解説 |
山里では,時として直径が2mを超えるようなトチノキの大木に出会うことがある。木炭には適さないが,実を救荒食料としたり,花がミツバチの蜜源として重要だったりするために,何百年もの間,伐採を免れてきたものだ。かつては,家ごとに木を割り当てて,実を収穫する権利を定めていた集落もあるという。見る者を圧倒するその姿は,神として崇められることさえある。幼虫がトチノキの花や蕾を食べて育つスギタニルリシジミは,山里に伝えられてきた文化を語る生き証人であるかもしれない。トチノミはそのままでは,とてつもなく苦くて到底食用にはならない。灰汁抜きを繰り返し,手間暇をかけてまでそれを食べなければ生きられなかった時代,人々はこのチョウをどんな目で見ていたのだろうか。そして今,変わりゆく山里はチョウの目にどのように映っているのだろうか。神奈川県付近ではトチノキだけでなく,ミズキやフジを食樹として,最近分布を拡大しているらしい。科学園記録種。 |
分布 | 北海道,本州,四国,九州 |
年間の発生回数 | 春1化 |
食草等 | トチノキ・キハダ |
成虫の出現時期 | 4月 |
越冬態 | 蛹 |